強み・弱みの可視化や相関分析から、課題を抽出

分析データはすべてグラフ化しますので、強み・弱みなどの特徴を一目でつかめます。また、例えば離職率が高いことが課題である場合、職場定着意向に関する相関分析等によって、関連するファクターとの因果関係などを解明しやすくなります。

アンケート分析例

相関分析の意思決定への活用例

キーとなる設問(職員の継続勤務意向や利用者の総合満足度etc)と、他の設問との相関係数を縦軸に、各設問のスコア(または満足度や評価)を横軸にして設問を分類します。優先課題を明確にする重要度分析

この場合、一般に相関係数の大小は、キーとなる設問に対する各設問の影響度合いまたは重要度と解釈できます(例外あり)。よって、左上の象限(相関係数が大きく、スコアが低い)に分類される設問課題が、キーイシュー(キーとなる設問課題)に対して優先順位が高い課題であると判断できます。また、左下の象限は、スコアは低いけれど、キーイシューにとっての重要度は下がるので中期的な課題、同様に、右上の象限は現時点における重要な強みであり、維持強化を図るべき分野、右下の象限は当面の対応は不要という判断ができます。

例えば、職員の職場定着意向をキーとした相関分析は、課題に対する戦略的思考に役立ちます

以下のデータは、都内の複数の介護施設(中~大規模施設)の職員を対象とした「介護職場診断サービス」のアンケート(40問、5段階選択式で1点~5点を割り当て:点数が大きいほどポジティブな回答)の回答結果を職種別に集計し、「職場定着意向(私はこの事業所で長く働きたい)」のスコアと他の39問の相関係数を計算し、有意水準5%をクリアした設問について、縦軸に相関係数、横軸に各設問のスコアをプロットしたものです。

特養介護員の職場定着意向に関する構造分析

上図は特養部門の介護員についての分析データです。「成長機会(私は今の仕事を通して成長できると思う)」が場定着意向との相関が最も高く、スコアも相対的に高いことから、成長できそうという意識が職場定着意向に対してポシティブに働いているといえます。ただし、成長期待は仕事そのものの性質によるところが大きいため、ステップアップ等の制度は十分かなど、施設独自の取り組みを見直し、場合によっては一層の整備をして、施設独自の強みに育てるという戦略も有効な選択肢になりえます。

次に相関係数が高いのは「働きやすさ(当事業所には職員が働きやすい制度や慣習等がある)」で、このスコアは低いことから、職場定着意向にとっての不満要因と解釈でき、解決すべき優先課題と言えます。実際、フリーアンサーには、休みが取れない、残業が多い、勤務時間の柔軟性がほしいなどの要望が目立ちます。そのようなことから、有給休暇消化に注力する施設も増えてきているようです。

主な離職要因といわれる「職場人間関係」は、相関係数が上から3番目で、施設によって差が出やすい課題でもあるので、やはり重要項目だとわかります。

また、スコアの低い「賃金(私の賃金水準は役割に対して妥当である)」は、相関係数も低くなっていますが、賃金の安さは業界全体の課題であって施設独自の課題ではないという認識が働いている可能性が考えられます。だから後回しで良いと判断するのではなく、ここで差をつけることによって優秀な職員の囲い込みや、新規人材募集における競争力強化をはかるという戦略も考えられます。

以下は、上記と同じ都内の複数の介護施設の特養介護員以外の職種について分析したデータです。職種によって、職場定着意向との関係性の絵は大きく異なることがわかります。

デイサービス介護員の職場定着意向に関する構造分析

特養福祉系専門職の職場定着意向に関する構造分析

医療系専門職の職場定着意向に関する構造分析

バックオフィス系の職場定着意向に関する構造分析

このように、当分析手法は、取り組むべき課題についての戦略的思考や、優先順位の判断などに役立ちます。その際、ハーズバーグの動機づけ・衛生理論で示されているように、不満要因の解消のみに焦点をあてるのではなく、動機づけ要因対策の強化という視点も考慮することで、より効果的な対策になりえます(関連記事)。